外出自粛中におすすめな映画をとりとめもなく語る
本当は画像にしてツイートにしようと思ったんですけど、おさまらなさそうだったのでこちらで。2020年4月現在NETFLIXやAmazonPrimeで観られる作品の中から個人的なおすすめをネタバレなしで適当に書き連ねておきます。暇すぎて精神やられそうな人は興味があったら観てみて下さい。個人的なおすすめ度順です。
NETFLIXで観られますが、配信の有無に関わらずイチオシの一本。1999年のアメリカ映画です。監督はちょっと前公開してた『1917』のサム・メンデス、主演は演技力の鬼ケヴィン・スペイシー。
スペイシー演じるしがない中年サラリーマンは、妻とうまく行っておらず一人娘との関係も冷え切っている。そんな中、ひょんなことから娘の友達に一目惚れをしてしまったと思いきや、今度は妻は妻で……と、どこにでもありそうな平凡な家庭がどんどん崩壊への道を辿ってゆくドラマ作品です。
様々な社会の闇要素を散りばめつつ、コミカルだったところからどんどんシリアスになっていく展開を追うところは最近話題になった『パラサイト 半地下の家族』にもどこか通じるものがあるのですが、奇しくもこの『アメリカン・ビューティー』も同じくアカデミー作品賞・監督賞・脚本賞に輝いています。主演男優賞を受賞したスペイシーはもちろんですが、妻役のアネット・ベニング、娘役のソーラ・バーチ、主人公が惚れる女の子役のミーナ・スヴァーリなど、主要なキャストは全員いい味を出しています。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』
NETFLIXあり。2018年のインド映画です。2000年前後のインドにおいて、生理用品の普及率の低さによる衛生問題を解決すべく、安価でナプキンを製造できる簡易的な装置を開発し普及率の向上に貢献した男の実話に基づく作品。
不衛生な布を使用する妻を看過できず、専用のしかるべき道具を使ってもらおうとするも「高すぎるから」と拒否されてしまう。ならばと自ら安く似たようなものを作ろうとするが上手くいかず、周囲からは女の股のことばかり考えている変態だと非難され、ついには村を追われる事態に。実話系社会派ドラマ作品ではありますが、ものづくりやビジネスに関する観点からも見応えのある一作。2時間で見ることができ、踊りのシーンもそんなに沢山ではないで、インド映画入門編としても最適だと思います。
NETFLIX・AmazonPrimeあり。2013年のアメリカ映画です。マーク・ラファロやウディ・ハレルソン、大御所のモーガン・フリーマンにマイケル・ケインとキャストは豪華。あっと驚くトリックが魅力的なエンターテインメント作品で、様々なトリックを駆使して盗みを働く4人組マジシャンとそれを追う捜査官を描いた映画ですが、トリックの種明かしはちゃんとあるし、いい意味で予想を裏切る展開が続くので観ていてとても楽しい一本です。
続編の『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』もネトフリ・アマプラ両方で視聴可能。『ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフが初めて挑んだ悪役の演技にも注目したい1作。
『お嬢さん』
AmazonPrimeで課金で観られます。『オールド・ボーイ』『JSA』などのパク・チャヌク監督による2016年の韓国映画。一言で表すと「ドスケベ変態バイオレンスサスペンス」とでも言いましょうか。舞台は1939年の朝鮮。日本人華族の娘と結婚するため、"藤原伯爵"と名乗る詐欺師が根回しのため手下の女を女中として邸宅に送り込みます。徐々に親しくなってゆく女中と娘。しかしながら、その家にはとんでもない裏の顔が......。
健全な青少年諸君にはとても見せられないドギツいフェティシズムエロシーンの爆弾盛りみたいなR指定映画でありながら、よくできた構成で面白いサスペンスドラマになっていて、セットや衣装も美しく見応えがあります。しれっとカンヌで美術スタッフが賞をもらっているし、英国アカデミー賞では外国語映画賞に輝いているところからもただのB級エロチック映画ではないと察してほしいところ。キャストは全員韓国人ですが、実に台詞の体感約半分が日本語なのも見所の一つ。
『レオン』
NETFLIX・AmazonPrimeあり。1994年の仏米合作の英語映画。隣人の少女マチルダを殺されそうな状況からとっさに匿った孤独な殺し屋レオンと、弟を殺された復讐のためレオンから殺しを学ぼうとするマチルダの交流を描いたアクションドラマ作品。
レオン役のジャン・レノや悪役のゲイリー・オールドマンの渋さ極まる雰囲気はもちろんですが、これが映画デビューであるナタリー・ポートマン(当時13歳くらい)もとても初めての映画とは思えないほどの素晴らしい演技力で観る者を魅了します。哀愁たっぷりな余韻に浸らせてくれるエンディングテーマ『Shape of My Heart』(Sting)も最高。
『セブン』
NETFLIXあり。『ファイト・クラブ』などのデヴィッド・フィンチャー監督による1995年の映画です。「7つの大罪」すなわち「大食」「強欲」「色欲」「高慢」「憤怒」「傲慢」「嫉妬」をテーマとする連続殺人が起こる宗教サイコサスペンスで、ブラッド・ピット演じる新任刑事とモーガン・フリーマン演じるベテラン刑事がこれに挑む……という内容。エグくて胸糞の悪い殺し方ばかりなので万人に勧められる映画ではないですが、犯人役俳優の不気味極まる怪演と四半世紀経った今でも語り草になっているラストシーンに加え、意図的なノイズや強いコントラストを駆使して印象的に仕上がった映像は一見の価値があると思います。OPとEDのキャストクレジットにも一仕掛けあるのが憎い。
『きっと、うまくいく』
AmazonPrimeにあります。インドの名門工科大学を舞台に3バカトリオが繰り広げる様々な騒動を描いたインド産コメディ映画ですが、同国で加熱する学歴至上主義社会に一石を投じ、大学の存在意義を、そこに通うことの本来の意味を問いかける社会派作品的な面もあります。そういう関係でシリアスなシーンも結構あるんですが、インド映画らしく歌って踊るシーンは満載で、『きっと、うまくいく』の邦題通りだいたいのことは丸くおさめてしまう楽しい映画となっています。3時間弱あるので今みたいな家での時間が十分ある時に是非観てみてほしい一作。
『アメリ』
ネトフリアマプラ両方あり。オシャレの塊みたいなフランス産ロマンチックコメディ映画。空想好きでコミュ力低めのカフェ店員アメリ・プーランを主人公とし、パリのモンマルトルを舞台にした日常もの作品(といってもまあまあ非日常的なことを起こしているが……)。主人公も大概変わった人ではあるが気になる男性として登場する男もまあまあ変な人であり、そこらへんのブラックユーモアやシュールな笑い所も特徴。
サクレ・クール寺院やノートルダム大聖堂などパリの名所も登場し、観光映画としても見どころ満載。また、主人公アメリが勤めているカフェもモンマルトル地区に実在するもの。気分だけでもパリに行ったような気になれます。
両方あり。巨匠マーティン・スコセッシによる2009年のミステリー映画。レオナルド・ディカプリオ演じる連邦保安官のテディは、マーク・ラファロ演じる部下と共にマサチューセッツ湾の孤島にある精神病院を訪れます。この島では、レイチェル・ソランドという女性患者が「The law of 4. who is 67?」という謎のメッセージを残して行方不明になっていました。
意味深すぎる出来事の連続に、考えようによっては2通りの意味に取れるストーリー展開。今目の前で流れている映像からどれだけ違和感を感じ取れるかによって見えてくるものが変わる、非常に面白いミステリー作品だと思います。
『遊星からの物体X』
アマプラ課金コンテンツ。南極基地という閉鎖された空間において、他の生物と同化・擬態する生命体「物体(The Thing)」に浸食される恐怖を描くSFホラーの傑作で、この手の映画の中ではかの『エイリアン』に並ぶ名作かと思います。誰が「物体」か? と疑心暗鬼になる人狼的な面白さや極限状態に追い込まれた人間模様もさることながら、CGなどなかった1982年当時の特撮によって造形された「物体」の本性は生々しいグロテスクさを持ち、観た後トラウマになって夢に出るのではないかと思うほどショッキングな一作になっています。さっきまで人間だったものが突如として形容しがたいグチャグチャの生命体に変身するシーンの生理的気持ち悪さときたらもう『バイオハザード』も真っ青なレベル。
続編の『遊星からの物体X ファーストコンタクト』はネトフリ・アマプラ両方で普通に観れますが、先にこっちを観てからの方が絶対面白いです。
『JSA』
アマプラにあり。上に述べた『お嬢さん』と同じパク・チャヌク監督の2000年の作品です。南北朝鮮の軍事境界線上にある共同警備区域(Joint Security Area)の北朝鮮側で、朝鮮人民軍の将校と兵士が韓国軍兵士によって射殺される事件が発生。調査の結果、事件に先立って韓国兵2名が無断で北側に越境し北朝鮮側の兵士2名と交流を深めていた背景が明らかとなる……。
南北ネタの韓国映画では多分トップクラスに有名な作品。事件がなぜ起きたのか、本当に射殺した犯人は一体誰なのかというミステリー要素もありつつ、分断国家という題材を強い悲壮感と共に描ききった名作。イ・ビョンホンが韓国軍兵士、後に『パラサイト』で主演を務めるソン・ガンホが人民軍兵士として出演してるんですが、この2人が対面して取り調べを受けるシーンが個人的に推しシーンです。
『LIFE!』
アマプラ(課金)にあり。『ナイト ミュージアム』のベン・スティラー監督兼主演作(2013)。出版社でフォトグラフ雑誌『LIFE』のネガフィルム管理者として働くしがない主人公だったが、会社の事業再編で雑誌が廃刊になることに。最終刊の表紙の写真を指定されるも、該当するフィルムが社内にない。主人公はリストラの嵐が始まる中、フィルムのありかを知るであろう写真家を追ってグリーンランド、アイスランドへと旅に出る……。
アイスランドの雄大な自然を浴びるほど堪能できる良質な旅映画で、これを観ればきっと旅に出たくなる(今は無理だが)。挿入歌として使用されているアイスランドのバンド「Of Monsters and Men」の『Dirty Paws』という曲もおすすめ。というか、Of Monsters and Men自体がおすすめ。もっと流行ってほしい。
『鍵泥棒のメソッド』
ネトフリアマプラ両方あり。堺雅人&香川照之というどっかで見たようなコンビが主演のコメディ映画(2012)。堺雅人演じる売れない俳優は、人生に絶望し自殺しようとするが失敗。その後銭湯に行ったらたまたま香川照之演じる金持ちそうな男が石鹸に躓いて盛大に転び頭を強打する現場に遭遇するのだが、それに乗じて咄嗟に男のロッカーの鍵と自分のロッカーの鍵をすり替え、彼の家に上がり込むと、何と彼が殺し屋らしいことを悟ってしまう。主人公は成り行きで殺しの依頼を受けてしまった一方、男の方は記憶を喪失し自分が売れない俳優らしいと思い込んでしまう……。「え、そうだったの?!」という意外な展開もあり、楽しんで観ることができる作品。